雪月花
「雪月花」へようこそ。月刊LaLaにて連載中の「狼陛下の花嫁」の二次小説を書いてます。心赴くままに更新していきますので、よろしくお願いします。
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近づく距離
夕鈴は後宮の自室である書物を読んでいた。それは紅珠が貸してくれた(というか、感想をお聞かせくださいませ・・・!とせがまれていた)書物なのだ。普段の夕鈴はこういう、恋愛色が深い読み物をすることはない。しかし、彼女を姉と慕うかわいい紅珠のお願い事なのだ、できることならかなえてあげたい。

「――あなたと共に過ごせる毎日は、わたしにとって珠玉の日々なのです。あなたを知らなかったころに戻るなど、とうてい考えられません・・・って。貴族の女性達にはこういう言い回しが好きなのかしらね。私にはよくわらかないわ」

なんて感想をいうべき?とても素晴らしいお話でした?うーん、ありきたりな感想になっちゃうわ。続きをよむため、再び視線を書物におとす。

「ええと、君と--」

「君とともにいられるのならば、私は地位も権力も、家すらも捨ててみせよう。君が私とともにあるならば、他のものなど、とるにたらぬこと--新しい書物だね、最近こういうの好きなんだ?」

聞きなれてる声に振り向くと、陛下が横から覗き込んでいた。心臓に悪い現れ方を!あわてて書物をとりかえそうとやっきになる夕鈴。が、いかんせん陛下とでは身長差がありすぎる。小柄な夕鈴はどんなにがんばっても、書物にふれることすらかなわなかった。

「~~~っ、返してくださいよ、陛下。まだ読んでるんですよ」

「えー?こんなの読まなくてもいいじゃない。--私の言葉だけでは、足りないということか?夕鈴」


ちがう、これ以上過剰な夫婦演技なんて私には無理!・・・でも、『プロ妃』なら、この場合、陛下にどう返すべき?夕鈴はそっと顔をあげ、「妃」の顔で微笑む。

「いいえ。陛下のくださる言葉だけが私を満たしてくれるんです」

決まった!内心ガッツポーズをする夕鈴。だが・・・

「そうか。しかし、言葉だけではわからぬこともある。そうだろう?夕鈴」

ぐっと腰を引き寄せられ、気づけば陛下の腕の中。逃げられぬよう力強く抱きしめられ、見上げれば間近に陛下の顔が。あわてて俯こうとするも、顎をつかまれていやおうなしに、視線をかわすことに。どきんっ、と心臓がはねあがるも、簡単に逃げ出せそうにない。

だんだん二人の距離が縮まる。どきん、どきんと心臓が早鐘をうってとまらない。ぎゅっと目をつぶったときほおに柔らかな感触が。驚いて目を見開くといたずらに成功したように嬉しそうな顔の陛下が。

「なっ、なっ・・・なにするんですか!陛下!」

「もちろん、ほおに口づけだよ、ゆーりん♪・・・それとも、唇のほうがよかったかな?」

クス、と笑いながらゆっくりと夕鈴を解放する陛下。真っ赤な顔になって口づけされた頬をおさえる夕鈴。ダッシュの姿勢をとって、すかさず逃げ出す。

「もう、陛下なんか知りませんから-―っっ!」

後ろから陛下がたまらない、といったように笑い出すのが聞こえた。






変わりゆく季節
秋の季節になり気候もかわっていく中、夕鈴は私は大丈夫、という過信のもと薄着で夜を過ごしていた。ある日。

「お妃様、おはようございます」

「おはよ・・・くしゅっ!」

「まぁ、お風邪を召されたのですか?」

「大丈夫ですから、着替えま・・・くしゃんっ!」

妃らしくないくしゃみをしてしまった。侍女たちがあわてて医師をよびましょう、というのを横になっていれば大丈夫ですから、とやんわりと断り、その日は政務室へいかないことにした。少し自分の体を過信しすぎてたみたいだ。数日で治るだろう、と思っていた。今までがそうだったのだから。しかし、治るどころか、こじらせてしまったのだ。

「ごほごほっ、な、治らない・・・どうして?」

「そりゃーお妃ちゃん、日ごろ薄着してるからだよ!気をつけた方がいいぜー、女は体を冷やすとよくないっていうじゃんかー」

「なっ、浩大!言われなくってもわかってるわ・・・ごほごほんっ!」

いきなり現れる浩大に、むきになって反論するも、途中でせき込み、涙目になる始末。正論を言われて反論できないから、にらみつけるが、涙目なので効果はなかった。

(視界が涙でぼやけて見えない・・・体がぐらぐらする、浩大が何か言ってる・・・こんなことになるなら、薄着なんてしなきゃよかった)

それを最後に夕鈴の体はぐらりとかたむき、崩れ落ちた。力強い腕に抱きとめられた感じがしたが、誰か確認する前に意識を失った。


「・・りん、夕鈴。しっかりして。目を開けてよ、夕鈴」

ああ・・・陛下の声がする。忙しいだろうに、私のそばにきてくれた。それがすごく嬉しい。目をあけなきゃ、と思うけれどまぶたが重くてなかなか目があかない。

「・・仕方がない。薬湯は私が口移しで飲ませることにしよう。君に無理はさせられない、おとなしく私に身をまかせたらいい」

そういうと、陛下は私の体をゆっくり起こし、顔を近づけ、息がかかる距離まで近づき、そして・・・

「だ、だいじょうぶですっ、目が覚めましたからっ!自分で飲めますっ」

「起きたのか、夕鈴。なかなか目覚めぬから医師に作らせた薬湯を飲ませようとしていたのだが・・・もしや、途中から目を覚ましていたのか?」

必死で陛下の体を押し戻した私に、陛下が答えにくい質問をする。様子を見よう、などと思ったのがいけなかった。心臓がいくつあってももたない!あわてて薬湯を受け取り、一気に飲み下す。

「とにかくっ、私はもう大丈夫ですから。御心配おかけしましたっ。元気になったらまた、政務室通いしますから」

ばくばくする胸をおさえながら、気候がかわるころに薄着は二度としない、と心に誓う夕鈴だった。
新たな絆(夕鈴編)
春の宴の準備に向けて着々と準備を進めていく官吏たちをみながら私は思った。このまますすめば彼らの陣頭指揮にあたっている柳 方淵と氾 水月が仲良くなり、二人の間で・・・


「やるな、氾 水月。家の中にひきこもってばかりかと思っていたが、貴様もなかなか見どころがあるじゃないか。見直したぞ」


「君もね、柳 方淵。堅いだけの御仁かと思っていたけれど、君を見る目が少しだけ変わったのは確かだよ」


・・・なんてことがあるかもしれないし・・・。と二人の間に厚い(熱い、ではなく)友情が芽生えたらどんなに素敵かしら・・・と二人に熱い視線を送る私。その時、二人が背筋にぞくぞくっとしたものがで走ったとは思いにふける私はもちろん、気づくよしもなかった。


後宮に戻ってからも私の宴終了後の「新・政務室!~官吏たちに芽生えた新たな絆~」(仮タイトル)の想像はつきなかった。ああなるといいな、いやこうなったらもっと素敵、だの・・・。周りに誰もいないと思い、ついつい物思いにふけっていると、ふっと頭上から影ができたので、驚いて見上げると陛下がくすくす笑いながら私のことを見ていた。

「へ、陛下!すみません、いらしてたんですね。私、気づかなくて・・・」


「いや、いいよ。君があんまり楽しそうにしてたから、少し見てたんだよ」

すみません・・・と再度ちいさく謝り、お茶の用意をしにいこうと席をたつと、陛下に手をつかまれ顔を覗き込まれた。


「で?何を楽しそうに考えてたの、僕の花嫁さんは?」

「え?えっと、それは、ですね・・・・・」


なんて答えよう?迷うことなんてないんだけど、宴後の官吏たちのこと(特に方淵と水月さんの仲が)どうなるのか、あれこれ考えてたなんて、陛下には言えないし・・・。


「・・・・僕には言えないことなの?夕鈴」

「いえ、そんなことないんです。ただ、どう言えばいいのか・・・・」


その時、空気が変わったように感じた。いや、今まで「子犬陛下」だったのが「狼陛下」に変わった瞬間だった。


「私には言えないことでも?君のすべては私のものだ。もちろん、君の考えることもすべて」

甘い言葉にかああっ、と顔が紅潮するのがわかる。赤くなるな、私の顔!と思えば思うほど赤らむのを止められなくなる。この人を前に黙っているのは無理だ、と考えていたことを正直に話した。


「ふうん?方淵と水月が、ねぇ。なんでそんなことを思ったわけ?」

「それは・・・宴というひとつの大きな行事をなしとげたら、二人の間に新たな絆が芽生えて、お互いを認め合ってですね」


つい力説してしまった。陛下が同意のように頷きながら何を思ったかは私は知らない。後日、李順さんから、「妃はほぼお留守番」と聞いてからますます想像の翼をはためかせる私だった。





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