雪月花
「雪月花」へようこそ。月刊LaLaにて連載中の「狼陛下の花嫁」の二次小説を書いてます。心赴くままに更新していきますので、よろしくお願いします。
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下町騒動(前編)
夕鈴は今、几鍔のおばばさまにこきつかわれる毎日を送っていた。本当に、休む間もなく。一日が終わると、へとへとになってしまうが、疲れた様子を青慎には見せられない。そのため、夕鈴はいつになく気を張っていた。

「姉さん、本当に大丈夫なの?最近、いつもより疲れが見えるよ。僕、塾を休んで姉さんの代わりに―――」
「だめよ、青慎!これは姉さんが、任されてることなんだから。何も心配せず、塾にいってきなさい」
「――――はい。行ってくるね・・・」

何度も振り返りながら、青慎は塾へといった。姿が見えなくなるまで手を振り、見えなくなったとたん、はあっっと息をつき部屋に入り座り込む。だがそれも、ゆっくりはできない。几家にでむかなくては。よし!と気合をいれると、夕鈴は几家へとむかった。

「遅いよ!あんたはアタシの小間使いだろう、遅れるとは何事だい!」
「はいっ、申し訳ありません!ただいまお茶をお入れいたします!」
「すぐにだよっ、ああ、それが終わったら仕入れにいくからついてきなっ!」
「はいっ、わかりました!」

今日も容赦ないわね、几鍔のおばばさま・・・ぱたぱたと動き回りながら、この感じほんっと李順さんを思い出すわ・・と遠い目をした。あのしごきがあればこそ、今のしごきに耐えられているのだ。ある意味、李順さんに感謝をしなくては。

「―――大丈夫なのか、夕鈴。おまえ、いつもの覇気がねえんじゃねえの。つらいなら、仕入れおれが代わりに」
「大丈夫だったら!変に気を使わなくて結構よ、几鍔!あんたはあんたの、仕事があるんでしょ」
「素直じゃねえなあ、相変わらず。そんなんだから、おまえはもてないんだよ」
「うっさい、ほっといて!いまからおばばさまにお茶出すんだから」

つい、と几鍔をよけると夕鈴はお茶の用意をもっておばばさまのもとへと向かっていった。その背中を几鍔がじっとみつめているとも知らずに。

「たまには、人を頼るってことも、必要なんじゃねえの、あいつ・・・・・」

壁によっかかりながら、ぼそっとつぶやく几鍔。そこへ、聞きなれた声がした。あの、いけすかねえ奴の声が。

「ねえ、几鍔くん。夕鈴、いつまで夕鈴は、手伝いをしなくてはいけないのかな?」
「!おまえ、いつの間にオレの後ろに・・・。わかんねえよ、オレだって早く終わればいいと思ってるさ」
「ふうん、そう。几鍔くん、ひとつ聞きたいんだけど、あのね――――――」

その後聞いた言葉に、几額は目を見開いた。
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誤解
掃除婦のバイトを今日は頑張ろう、と気合をいれて掃除をしていると、強い風がふいて目にごみがはいったみたいだった。

「きゃっ!いったぁ、目にゴミが・・・」
「どうかしたー?お妃ちゃん。ああ、いまの風で目にゴミ入ったんでショ?とってあげるから、じっとしてて」
「う、うん。はやくして、痛すぎるー」

夕鈴と浩大だと、浩大のほうが身長が高いため、浩大が夕鈴に近づき顔を近づけて、かがむ形になる。はたからみたら、口づけしてるように見えなくもない。夕鈴はそれに気づかないが、浩大は全く気付いていないわけではない。なので、さっととってあげたつもりだった。浩大は。

「ん、大丈夫だわ。ありがとう、浩大。――浩大、なんか顔、赤くない?いつもは普通なのに・・・あ、もしかして、熱でもあるのかしら、ちょっとじっとしててね」
「わっ!お、オレ熱なんてないってば!まずいよ、お妃ちゃん」
「?なにがまずいのよ、ちゃんと熱あるかみてあげるから、じっとしなさいってば!」




額をくっつけ熱をみようとする夕鈴に対し、じりじりと下がる浩大。永遠に続くかと思われたそれは、地をはうような低い声によって、破られた。


「―――――なにをやっている?夕鈴。君は私の妃だろう、なぜ他の男と睦まじくしているんだ?」
「へ、陛下!む、睦まじくって・・・浩大は目に入ったごみをとってくれた後に、顔が赤くなってるように感じて、それで熱でもあるのかと思って――――っ」
「いかなる理由を述べようと、君が他の男に近づくことを、私が許すとでも?夕鈴。掃除はもう終わって、部屋へ帰ろう。浩大」
「は、はーい」
「後でゆっくり、話し合う必要がありそうだ――――いろいろと、な」


そう言い残すと、夕鈴を抱き上げて、陛下は立ち入り禁止区域を後にした。後に残された浩大は、『話し合う』がただの話し合いでないことを予想し、仕方ないねぇ、とひとり笑ごちた。

お見合い
「お見合い、ですか?なんでまた急に」

訝しげにこちらをみてくる李順さん。私は父からの手紙を差し出しながら説明する。父の知り合いの商家の息子と会うことになっているらしく、むこうがぜひに!と請われてのことで、断れなかったということだった。手紙を読み終えた李順さんは、仕方ありませんね、と頷くと3日間の休みをくれた。気乗りしないけれど、父さんのためだもの、会うしかないわ。その足で私は下町へと戻っていった。

「姉さん、おかえり。早かったね」
「ただいま、青慎。しばらく帰れなくて、本当にごめんね。お見合いだけしてくるわ」
「ねえ、姉さん。この間のその・・・李翔さんはいいの?姉さんの恋人なんじゃないの?」

青慎の何気ない問いに陛下を思い出し、どきんと胸が高鳴る。陛下には黙ってでてきちゃったし・・・後で狼陛下で怒られるかなあ。それとも、子犬でしょぼんとされる?いずれにしても内緒で来たのは間違いなく。

「姉さん?」
「な、なんでもないわ。お見合い相手の人の家はどこ?行ってくるわ」
「あ、ごめん。王旦那の家だよ、わかるよね?行ってらっしゃい、姉さん」
「うん、いってきます。なるべく早く帰るわね」

青慎と別れてから、王旦那の営む商家をめざして歩いた。しばらくいくと、「王商家」という看板がみえてきた。前までくると、人のよさそうな青年がたっていて、私を見てにこりと笑って挨拶してくれた。

「はじめまして、夕鈴さん。子英と申します。このたびは、縁談をうけていただき、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ、この度はありがとうございます」
「立ち話もなんですし、入りましょう。どうぞ、こちらへ」

子瑛さんが案内してくれた部屋は小奇麗に掃除されており、気を配ってくれているのがわかった。にこにこと、人当たりのいい笑顔をうかべる彼。お茶を出され、口をつけながらそっと子瑛さんをみてみる。王旦那の息子さんだけあって、しっかりしてそう。沈黙の中、先に口火を切ったのは、子英さんだった。

「夕鈴さんは、この縁談をどう思われますか?」
「どう・・・っていうと?」
「僕はこの王商家を父以上に大きくしたい、と思っています。それに夕鈴さんがいてくれれば、頑張れる、そう思うんです。前向きに考えてくださいませんか?お互いのことは少しずつ知っていけばいい。お願いします、夕鈴さん」
「子英さん、私・・・・・」

返事をしようとすると、後ろから抱きしめられた。前には子英さん。じゃあ、後ろは・・・?

「悪いね、夕鈴は僕のものなんだ。誰にも渡すわけにはいかないんでね。行こう、夕鈴」
「へ、李翔さん?どうしてここに・・・!?」
「ごめんね、李順に聞いちゃった。夕鈴が僕以外の誰かのものになるのか、って思ったらいてもたってもいられなくて」
「待ってください!あなたは一体誰だ?人の見合いを邪魔して、何を考えてる?」

子英さんの静止の言葉にぴた、と歩みをとめた陛下は、私の肩を抱きながらにっ、と微笑んだ。

「僕は、彼女の旦那さんだよ。君に彼女は渡せないよ、他のだれでも渡さない」

口端は笑っていたけれど、陛下の目はけして笑っていなかった。びく、とした子英さんに私は頭を下げた。

「ごめんなさい、子英さん。このお話、お断りします。ほんとうに、ごめんなさい」
「――――君は、本当にその男が好きなのか?」

子英さんは真剣に私のことを見つめているので、私も真剣に答えた。

「ええ。好きです」
「わかったよ。そこまで言われたら仕方ない、僕はひくことにする。幸せにね、夕鈴さん」

子英さんに見送られて私たちは「王商家」をあとにした。連れだって帰ると、青慎にやっぱり・・・という顔をされた。休暇の間、下町を案内したりしてまあ、楽しい休暇だったかな。
月見の宴
最近の秋の夜は月が綺麗だと思って、政務室で陛下と二人きりの時に、そろそろ月見とかしたら楽しいですよねと話しただけだった。それだけだったのに・・・・

「お妃様におかれましては、ご機嫌麗しく。此度は、月見の宴をされたいとのことでしたので、我らの方で段取りを整えましてございます。恐縮ではございますが、お時間を頂戴できますでしょうか?」

「・・・ええ。ありがとうございます。氾大臣、柳大臣。感謝いたしますわ」

にっこりと、妃スマイルで優雅に微笑みつつ、違う、そんなつもりで言ったんじゃ-ーっ!!と夕鈴はどこから陛下と二人だけでした話が漏れたのか、と首をひねった。春の宴では、息子たちに奪われた宴の責任者の任を今度こそは、と夕鈴の前で静かなる攻防がなされた。必死で妃演技をしたが、いつぼろがでるか心配だった。

「お妃様、我らのお話聞いていただけましたね?それで、我らのうちどちらかを宴の責任者として任命していただきたく・・・」

「え、ええ。そうですわね。どちらも、素晴らしい宴になることは間違いありません。ですので、わたくしにはどちらかなど、選べません。どちらかが、欠けるのはわたくしはいやなのです。おわかりいただけますよね?」

どっちを選んでも、宮廷の勢力争いの図が大きくかわる。うかつな言動は慎むよう、李順さんからも注意されているし、夕鈴としても難しいところだった。ふと、思いつく。

「そうですわ。宴を二日に分け、初日と二日目とで責任者を両大臣で決め、主催してはいかがでしょう?どちらの大臣の宴も楽しめます。どう思われますか?詳しくは両大臣でお決めになられたら、よろしいでしょう」

「は、お妃様の仰られるように致します。宴のほう、お楽しみになられるよう、我ら両名精一杯努力いたしますので。では、お妃様。また宴の折に・・・・・」

両大臣は夕鈴に深々と礼をし、颯爽と去って行った。二人が去ったのを確認してから、はぁっとため息をつき、椅子にもたれかかる。李順さんがなにかいいたげだが、決定的なぼろをださなかっただけでも、妃演技が「プロ妃」に近づいたのかも、と自分を励ますことに。

後日、二日に分けて催された「月見の宴」は二日とも、風情のある趣向の凝る宴で盛況なうちに終わったとか。始終にこやかにしながら、睨みをきかしあっていた両大臣は見ものだったとか。そのそばでいつも以上に冷え切ったオーラをだす狼陛下は、改めて臣下たちの畏怖の対象になったのであった。
罪作りな発言
「なー、お妃ちゃんって好きなやついるの?」

それは、浩大の何気ないひと言からはじまった。

いつも通り、お妃バイトもこなしながら、掃除婦バイトにいそしんでいる夕鈴。手がけていた掃除がひと段落し、休憩していたときに、ひょっこり現れた陛下の隠密・浩大がもらした何気ないひと言。

「浩大、なによ、急に」

「だーかーら、お妃バイトはおいといて、お妃ちゃんが本当に好いている男がいるのかってことだよ!」

やぶからぼうにそんなことを言い出す浩大。急に言われたので目をぱちくりとするが、少し考えてみる。今までにそういった経験がないだけに、どう答えていいのかわからない。

「・・・いないわよ、そんな人。几鍔じゃないかって下町のみんなは言うけどね。あんなのとくっつくと思われてるなんて、冗談でもやめてほしいわ!」

「そ、そっかー。じゃあ、この王宮にはいいなー、なんて思う人とかいるわけ?陛下にはいわないからさ、教えてくれない?」

「・・・どうして、私が好きなひとを浩大に教えなくちゃいけないのよ」

そう答えながら、夕鈴は少しいたずら心で、

「・・・じつはね、私、浩大のことが好きなのよ」

とにっこり微笑んだ。えっ?と目を丸くする浩大。動揺がみてとれたから、調子にのって夕鈴は、瞳を潤ませ、

「ずっと、お慕い申し上げておりました・・・浩大様」

と囁いた。夕鈴の言葉に硬直する浩大。彼の背を冷たいものが走る。今の言葉を陛下に聞かれていたらどうなっただろう?と。

「じ、じょうだんだよね?お妃ちゃん?」

「それは・・・」

もちろん冗談よ、といいながらそうだよね、そうに決まってるじゃない、と二人は笑いあった。夕鈴にとってはたあいない冗談であったろう。だが、浩大にとっては自分の命を危うくするものでしかない。瞬間、ぞくっ、と寒気が浩大を襲った。--陛下だ。

「お妃ちゃん、オレ、用事思い出したわ、まったねー!」

「そうなの?私ももう少ししたら着替えて部屋に戻らなくちゃ。陛下においしいお茶をいれてさしあげるの」

「んじゃ、またね、お妃ちゃん!」

しゅたっ、と浩大はその場から消えた。「?」と疑問符を頭に浮かべながら、夕鈴は掃除婦のバイトの残りをおえ、自室へと戻ったのだった。その日の陛下は笑顔を浮かべているものの、どこか不機嫌さも垣間見え、夕鈴は疑問に思いながらも、自分の何気ない冗談から浩大がひどい目にあったとは、ついぞ考えなかったのだった。





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